2004/11/06

ポエム・DA・特殊部隊

きみは特殊部隊だ

すべての開かれた窓へとびこめ

きみは特殊部隊だ

鍵のかかったドアをけやぶれ

きみは特殊部隊だ

ひいらぎの葉のような炎をのりこえ

かつてやさしい涙にぬれ
いまはすすけた頬をニット棒にかくし

閃光のグレネードが
善いおこないも悪いたくらみも
真っ白にけしとばせる


きみは特殊部隊だ

きつくしばられた人質をすくえ

確保しろ そして解放しろ

きみは特殊部隊だ

きみの任務は特殊なものだ

ケブラーのジャケットと手袋ごしに
あらあらしい振動とともに
きみが審判を下す

傲慢だ と神学者は云うかも知れない

しかしかれらの祈りの言葉も
銃弾の速さには追いつけない


特殊部隊のきみはある日運命にやられる

すべてのおいしかった食べ物と
うつくしかった景色と
たのしかった友との交わりと
それらをすべて一万マイルのかなたに押しやって

きみは砂のういたコンクリートにひざをつく
いくつもの光の束がきみをかけぬけてゆく

きみはなぜか天井を仰ぐ
うすぐらい天井はなぜかとてもたかい

無線の雑音だけがきこえて 砂と血をまぜる

特殊部隊のきみは
さいごにいちどだけたちあがる

まぶしくあけはなたれたとびらへむかう


閃光のグレネードが
善いおこないも悪いたくらみもすべて
真っ白にけしとばせたあとで

そこにきみをむかえる
おおぜいのもとへきみはあるく

きみはかつては特殊部隊だった

名もなき顔も知れぬただの力だった

だがいまは羊とたわむれ
小川に足をひやし
花の蜜をすって 口笛をふいている

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2004/11/03

レイン・ドッグ

デニムの作務衣といっしょに洗った
4枚のバスタオルは

眼を細めながら見上げた
11月の空の色

この部屋のどこかから
雨の日の
ずぶぬれの犬の匂いがする

この部屋のどこかから
ときどき
携帯のバイブコールのような
低い声が聴こえる

それはいつも真夜中に
ちょうどいまのような時刻に
ふいにきまって一声だけ
ぶん
と唸って途切れる

この部屋のどこかに
雨の日の
ずぶぬれの犬がいる

名前もない小さな犬で
晴れの日にも凍えふるえていて

バスタオルが4枚あっても
拭いてあげることはきっとできない

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