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2010/07/12

七夕に七転八倒の巻

神様は我々人間が
「そうなることを想像できない」という
罪を犯せば、どんな災厄でも
その身にふりかからせる。

以前読んだキングの小説か何かに
書いてあった箴言。うろ憶え。
天災は忘れたころにやってくる、
みたいな文言と似ていますな。

えっ、あの人最近あんまり
見ないと思ってたけど、なくなったの?
というような
急転直下、晴天の霹靂が
我々の暮らしにはいたるところに
身をひそめ待ちかまえている。

たとえばおのれにふりかえってみて、
まさかこの自分が、
今月はさして激務でも
過密スケジュールでもなく、
けっこう自分の時間も
休息もとれているのに
病院に行くような羽目に陥るとは、
ましてやその後
これを書いている今も続く
苦しみに苛まれようとは、
まさに「想像しなかった」のであった。

異変の起きたのは七夕の夜に遡る。

七夕、七月七日の夜は
たしか気象学的な統計からみて
まず晴れることが珍しいとされる
特異な日だった気がする。
しかし今年の七夕は雲こそあるものの
どうにか晴れていた。

ちょうどこの前の記事を書いて
数時間後のことである。
せっかくの天気だしということで、
ワタクシは妻に、
天神さんの七夕を観にいくことを
提案していた。

とはいえまずは腹ごしらえである。
キャベツともやしメインの
野菜炒めをこしらえ、缶ビールを
一本空けた。

思えばこのとき、おなかにいままでにない
刺すような痛みの予兆を感じていた。

まあしかし、腹が冷えただけだろう、
くらいに思い、着替えてJRに乗り
大阪天満宮を目指した。
我が町海老江からは数駅の距離である。

着くと午後9時前。境内の夜店は
あらかた店じまいをはじめており、
我々はちょっと失望しつつも、
ともかくお参りだけでも済ませようと
参列に加わった。

と、どうしたことだ、じわじわおなかが
痛くなってくるではないか。
こらえながら参拝を済ませる。
「これからもふたりで健康で仲良く
暮らしてゆけますように」。

そう願い首を垂れると、もう
そのまま腰を折りたくなるほどの痛みが
鳩尾のあたりに
ずぎゅーんとくるではないか。

しかしそれでもまだ余裕があった。
とぼとぼ、走らずに歩いて駅をめざすことが
できる程度には。

大阪天満宮駅でトイレに寄ることにする。
こういう場合、一回トイレで
用を足しちゃうと
恢復することがあるもんね。
と思って身をかがめると、案の定の下痢。

あちゃー、これは冷やしてもたなー、
と思いつつも、妻と電車に乗り込む。

だが車両の揺れは意外な突き上げを
我が身に与えた。
今度は猛烈な吐き気が
襲ってきたのである。

急遽、一駅手前の
新福島で降りるが早いか、
迷惑とは知りつつも
対岸のホームから線路へ嘔吐。
そのままへたり込む。

なんとかもう一駅乗り継いで
最寄駅・海老江に着くも、もう自宅まで
歩いて帰れる気力がない。
そのうえ、強烈な寒気まで感じるように
なってきた。

改札を出、地上に上がるとその足で
近所の病院の夜間救急外来へ。

診察を待つ間熱を計る。
38.3℃。
いつのまに? って感じである。
そのまま痛み止めの点滴を打たれ
しばし処置室で休ませてもらうことに。
あまりに身体が寒く、
歯の根も合わなくなってきたので
掛け布団を二重にしてもらう。

診断結果はおそらく
急性の腸炎だろうとのことであった。
原因は不明。

困ったことになった。
なぜって翌日から3日間、
ワタクシは奈良県の秘境・天川村にて
撮影を行う予定だったからである。
もちろん前日のこんな深夜になって
変更は効かないし、この梅雨時の
不安定な天気では、
晴れの予報の出ているときに
ロケに行かない手はない。

うんうん呻きながら夜を明かし、
満身創痍で翌日ロケへ。
もうこれが。
これが。

全身から発熱しているのか、
筋肉がこわばり、わななき、メキメキと痛い。
この喩えを人に話しても
もうひとつ伝わったためしがないが、
まるで自分が外骨格のカニかエビかで、
大きな人間の手で
生きながらバキバキと
殻をむかれているような痛みである。

ほら、もひとつ判りにくいでしょう?
本人的にはピンときているのである。
あるいはケチャップとマスタードが
同量入っている使いきりポーションの、
ホットドッグに使うような、
平たいプラスチックのフタを真ん中で
パキッと折って、中身をじゅーっと
噴き出させる、便利なやつありますね?
あれ。自分がアレになったみたい。
パキッと折られてじゅーっ、である。

ロケしてても立っていられないし
思考がまとまらない。
ロケ車に戻るたびに倒れこむ。
食事なぞろくに喉を通らない。

なんとか1日目を乗りきり、
我が家に戻ってきて倒れこむ。
問題は翌日からで、
なんとスケジュール的に
泊りがけなのである。

一晩休んで朝起きて、
体重計見てあぜんとした。
実はワタクシ、ダイエットのため
日課として毎朝体重計に
乗っているのであるが、
何と前日値からいきなり
1.5kg以上減っているのである。
63.0kg。
ここ数年到達し得なかった数値である。

翌日は関節の痛みこそとれたが
それでも腹痛と下痢はマックスで、
幸か不幸か悪天候のため
予定していたアウトドア系のロケを
中止とさせていただいた。
あとは宿に一足早く入り、
布団を敷いてもらって
ひたすらカラダを休める。

なぜか天川村の、旅情ある温泉宿で
身もだえしつつ闘病。


しかしまだ30代男性の体力は
捨てたものではなく、
夜が明けるごとに自分がどんどん
恢復して行っているのが判る。
旅館の朝ごはんは
おかずこそ食べられないものの
白ごはんをおかわり、
昼はざるそば完食、
夜も玉子ハムサンドと野菜ゼリー完食、
て何とかしのいだ。

体重は結果的に62.0kgまで落ちた。
これは大学生当時と
たいして変わらぬ数値である。

実は去年の秋には71~72kgまで
太っていたので、これはあまりにも
痩せてしまったことになる。

いやはやおのれの身の
急激な調子の悪化に畏れおののいた。
ニンゲンってこんなに簡単に
38℃とかの熱を出し、
こんなに短時間に数kgも
落ちるものなのか。

えっ、あの人最近まで元気だと
思っていたのに、
このところ見かけないと思ったら
なくなったの?
と、思われる側に
なっちゃうんじゃないかと
いう勢いである。

最も意外なキャスティング、
それは自分。イヤだイヤだ。

七夕以来、コーヒーもビールも絶ち、
というより飲める気がせず、
カレーなどの刺激物や
カツやフライなども避けている。

といってもまだ5日しか
経っていないけど。

今の夢は
ケンタッキーか唐揚げ喰いながら
生ビール、である。


ワタクシは七夕が来るたび
思い出すだろう。
星を見るたび思い出すだろう。
健康のありがたみを。

皆様もこれからいよいよ夏本番、
どうぞご自愛ください。


くれぐれも。

追伸:妻よいろいろありがとう。
とここに書いておきます。

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コメント

てっきり過労でぶっ倒れたのかと思ってたよ
経験ありますわ
上と下からざーざーと
顔色が土色になるのよね

まけるな!キノタク!

投稿: 店長 | 2010/07/12 午後 07時26分

ご心配かけました。
過労で倒れれるほど根性ないです。

経験ありますかー!
まさしく土気色になっておったようです、
妻や仕事先の証言によると。

いったいこりゃしかし
どうやって再発を防げば
いいんでしょうかいのう?

投稿: キノタク | 2010/07/13 午前 08時18分

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